どうして食物繊維は重要なのか

食物繊維

食事は、私たちの健康に大きな影響を与える要因の一つです。その中でも、「食物繊維」は、健康にとって非常に大切な栄養素です。
食物繊維は、穀物、野菜、果物、豆類、ナッツ、種子など、私たちの食べ物に含まれています。
これを摂ることで、便秘の予防や改善、心臓病や糖尿病のリスクの軽減など、体にさまざまな良い影響をもたらします。

この記事では、食物繊維の大切さと、日々の食事でどう摂るかについて詳しく紹介します。
食物繊維を食事に取り入れることで、健康な生活をサポートし、食べ物の選び方に役立つ情報を提供します。

そもそも食物繊維とは

食物繊維とは、人の消化酵素で分解されない食物中の成分のことです。
食物繊維には、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維の2種類があります。
これらの食物繊維は、それぞれ異なる特性を持ち、身体に様々な効果をもたらします。

水溶性食物繊維は、水に溶けてゼリー状になる性質があります。
この性質により、小腸での栄養素の吸収速度を遅らせたり、コレステロールやナトリウムを吸着して体外に排出したりする働きがあります。
その結果、血糖値や血圧の上昇を抑えたり、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の予防に役立ったりします。
水溶性食物繊維は、果物や野菜、海藻などに多く含まれています。

不溶性食物繊維は、水分を吸収して便の量や柔らかさを増やす性質があります。この性質により、大腸のぜん動運動を促進し、便秘を改善したり、有害物質を排出したりする働きがあります。
その結果、腸内環境を整えたり、大腸がんなどのリスクを減らしたりします。不溶性食物繊維は、穀類や豆類、野菜などに多く含まれています。

食物繊維は、「第六の栄養素」とも呼ばれるほど重要な成分ですが 、現代人は食物繊維が不足しがちです。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人男性は一日21g以上(65歳以上は20g以上)、成人女性は一日18g以上(65歳以上は17g以上)の食物繊涭を摂取することが目標とされています。
しかし、令和元年国民健康・栄養調査では、実際の摂取量は18.4gと不足気味でした。

食物繊維は種類によって効果が異なるため、さまざまな食品を組み合わせてバランスよく摂取することが大切です。
水分と一緒に摂ることで効果が高まりますので、水分補給も忘れずに行いましょう。
食物繊維を多く含む食品の例としては、以下のようなものがあります。

・果物:リンゴ(1個で約3.5g)、バナナ(1本で約2.6g)、オレンジ(1個で約2.4g)、キウイフルーツ(1個で約2.3g)など
・野菜:ブロッコリー(100gで約2.6g)、ニンジン(100gで約2.4g)、かぼちゃ(100gで約1.1g)、さつまいも(100gで約2.5g)、ごぼう(100gで約5.0g)、たけのこ(100gで約4.0g)など
・豆類:納豆(50gで約2.0g)、豆腐(150gで約1.5g)、おから(100gで約15.0g)、大豆(100gで約9.6g)、レンズ豆(100gで約11.6g)など
・穀物:玄米(150gで約3.0g)、そば(100gで約5.8g)、ライ麦パン(1枚で約3.8g)、オーツ麦(100gで約10.6g)など
・海藻類:ひじき(10gで約5.7g)、わかめ(10gで約3.0g)、昆布(10gで約4.4g)など
・種子類:亜麻仁(10gで約3.3g)、チアシード(10gで約3.4g)、ごま(10gで約1.1g)など

食物繊維は身体にとって必要不可欠な成分です。
食物繊維を十分に摂取することで、腸内環境の改善や生活習慣病の予防など、健康に多くのメリットがあります。
日々の食事に気を付けて、食物繊維をバランスよく摂るようにしましょう。

食物繊維が不足するとどうなる?
食物繊維が不足すると、以下のような健康への影響が起こる可能性があります。

便秘

食物繊維が不足すると、便が硬くなり、排出が困難になり、便秘の原因となります。
便秘は、腹痛や腹部膨満感などの不快な症状を引き起こすだけでなく、腸内の有益な細菌のバランスを崩し、腸内環境が悪化。
腸内環境が悪化すると、免疫力の低下や感染症のリスク増加などの影響を受けるかもしれません。

血糖値・コレステロール濃度の上昇

食物繊維は、血糖値やコレステロール値にも影響します。
食物繊維は、消化吸収を遅らせることで、血糖値の急激な上昇を防ぎます。
また、胆汁酸やコレステロールと結合して体外に排出することで、コレステロール値を下げる働きもあります。
コレステロール値が高いと、動脈硬化や心筋梗塞など心血管系の疾患のリスクを高めるため、食物繊維を意識してとるようにしましょう。

肥満

血糖値が高くなると、インスリンの分泌が増え、余分なエネルギーが脂肪として蓄積されます。
これが肥満の原因です。肥満は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを高めるので改善したいところです。
食物繊維は食事からの栄養吸収を遅らせ、満腹感を促す効果があるので、意識してとりましょう。

以上のことから、食物繊維は私たちの健康にとって重要な栄養素であることがわかります。

食物繊維を意識的に取り入れる方法

食物繊維を意識的に取り入れるにはポイントがあります。

食物繊維は主に野菜や果物、穀物、豆類などに含まれます。これらの食品を毎日の食事に多く取り入れることが基本です。
特に、皮や種などに多くの食物繊維があるので、できるだけ丸ごと食べるようにしましょう。

食物繊維は加工されると減少する傾向があります。
白米よりも玄米、精製された小麦粉よりも全粒粉、ジュースよりも生の果物など食物繊維が豊富です。
加工された食品は避けたほうがいいでしょう。

食物繊維を摂る際には、水分も十分に摂ることが重要です。
水分が不足すると、食物繊維が腸内で固まってしまい、逆に便秘や腸閉塞を引き起こす可能性があります。
一日に約2リットルの水分を摂ることを目安にしましょう。

食物繊維が不足していたらどうする?

食物繊維の摂取量が不足している場合は、以下のような方法を試してみましょう。

・白米や白パンなど精製された穀物製品を避けて、玄米や全粒粉パンなど全粒穀物製品を選ぶ
・果物や野菜は皮ごと食べるか、できるだけ薄くむく
・果物や野菜のジュースではなく、生のまま食べる
・豆類や種子類をサラダやスープにトッピングする
・海藻類をサラダや和え物にして食べる
・青汁などの食物繊維を含むサプリメントを利用する

一日に必要な食物繊維20グラムを摂れるメニュー

一日に必要な食物繊維20グラムを摂るためのメニューの一例を紹介します。これは食物繊維が豊富な食材を組み合わせた簡単な食事です。

朝食:オートミールとベリーヨーグルト

オートミール:約1/2カップ(約4グラムの食物繊維)
ヨーグルト:低脂肪のベリーヨーグルト(約1カップ、約2グラムの食物繊維)
ブルーベリー:お好みで加える(約1/2カップ、約2グラムの食物繊維)

昼食:野菜たっぷりのサラダと豆腐のスティック

サラダ:レタス、トマト、キュウリ、赤ピーマン、ベビーキャロットを組み合わせたもの(約4グラムの食物繊維)
オリーブオイルと酢をかける
豆腐のスティック:約1/2カップ(約2グラムの食物繊維)

夕食:魚と野菜の焼き物と玄米

鶏胸肉または魚:約100g(たんぱく質を摂る)
野菜:ブロッコリー、アスパラガス、にんじんなどを焼く(約4グラムの食物繊維)
玄米:約1/2カップ(約4グラムの食物繊維)

間食:リンゴとアーモンド

リンゴ:1個(約4グラムの食物繊維)
アーモンド:約1オンス(約3グラムの食物繊維)
このメニューは一例であり、個々の好みや食事制限に合わせて調整できます。食物繊維は便秘の予防や健康維持に重要な栄養素ですので、バランスの取れた食事計画を立てることが大切です。

食物繊維のサプリメントについて

食物繊維のサプリメントは、特定の状況やニーズに応じて効果的である場合がありますが、食事から得る自然な食物繊維を摂ることが一般的に推奨されます。

サプリメントの種類

食物繊維サプリメントは通常、不溶性食物繊維や水溶性食物繊維のいずれか、または両方を含む形で提供されています。
これらのサプリメントは、便秘の緩和や食事からの不足栄養素の補給に使用されます。

イヌリン

イヌリンは、水溶性の食物繊維であり、健康に対していくつかの効果が期待されています。
大腸で発酵され、腸内の善玉菌(ビフィズス菌)の増殖を促進。これにより、腸内環境が改善され、便通がスムーズになります。
また、食後の血糖値上昇を抑制する効果があります。

難消化性デキストリン

難消化性デキストリンも食物繊維の一種であり、さまざまな健康効果が期待されています。
消化吸収が遅く、炭水化物の吸収スピードを遅らせる特性があり、食事の後に血糖値が急激に上昇するのを抑制する効果があるとされています。
また、食事後に満腹感を高めることがあり、過剰な食事摂取を抑制するのに役立つことが報告されているので、肥満の予防が期待できるでしょう。

食事からの不足栄養素の補給

食事での食物繊維をとれない場合、サプリメントは食物繊維の不足を補うのに役立つことがあります。
ただし、食事の改善が最も効果的な方法です。

注意点

食物繊維サプリメントを摂る際には、適切な摂取量を守り、水分摂取を増やすことが重要です。
過剰な摂取は下痢などの消化器の不快な症状を引き起こす可能性があります。

最終的な効果は個人差があり、状況によって異なります。
食事に工夫を凝らして多くの種類の食物繊維を摂り、サプリメントは食事の補完として利用することが良いでしょう。

まとめ

食物繊維は、健康に不可欠な栄養素であり、私たちの食事に取り入れるべき重要な要素です。
適切な食物繊維摂取量を確保することは、便通を改善し、糖尿病や心臓病のリスクを低減させ、体重管理にも役立ちます。
また、腸内環境の健全性にも寄与し、免疫機能を向上させる可能性があります。

健康を維持し、疾患を予防するために、食事計画に食物繊維を取り入れるようにしましょう。
野菜、果物、穀物、豆類などの食品を積極的に摂ることで、食物繊維の恩恵を享受できます。
健康的なライフスタイルを築くために、食物繊維を意識的に取り入れ、バランスの取れた食事を心がけましょう。